溶接 点付けとは?仕組み・方法・注意点を徹底解説

溶接の現場で「点付け(てんづけ)」は、部材を仮固定するための基本的な作業工程です。
特に鉄鋼やステンレス、アルミなどの板金・構造部材の溶接では、歪み防止や寸法精度の保持に欠かせません。

しかし、初心者や設計者の中には「点付けってどうやるの?」「本溶接との違いは?」と疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、「溶接 点付け」で検索する方が知りたい基礎知識から方法、注意点、導入事例までをまとめました。
実務で役立つ情報を、具体例や図表を交えて分かりやすく解説します。


目次

1. 溶接の点付けとは?基本知識・定義

点付けの定義

点付け(tack welding)は、部材を本溶接する前に一時的に固定するための短時間の溶接を指します。

  • 特徴:溶接ビードは小さく、母材に最小限の熱影響を与える
  • 目的:部材の位置合わせ、変形防止、加工精度の保持

点付けの仕組み

  1. 母材同士を所定の位置に合わせる
  2. 短いアークで局所的に溶融させ、溶接ビードを作る
  3. 仮固定が完了したら本溶接に進む

適用分野

  • 薄板溶接:自動車・家電・板金加工
  • 厚板・構造物:建築鉄骨や橋梁、タンク製作
  • 精密部品:ステンレス・アルミ配管の仮固定

2. 点付けの特徴・メリット・デメリット

メリット

  1. 変形・歪みを防止
    本溶接前に母材を仮固定することで熱歪みを最小化。
  2. 加工精度を保持
    複雑な形状でも寸法精度を確保しやすい。
  3. 作業効率の向上
    点付けで部材が固定されるため、本溶接の作業がスムーズになる。
  4. 安全性の向上
    部材がずれないことで作業者の手や工具の事故リスクを低減。

デメリット

  1. 仮溶接なので強度は低い
    点付けだけでは荷重に耐えられないため、本溶接が必須。
  2. 溶接痕が残る
    本溶接後に研磨や仕上げ処理が必要な場合がある。
  3. 熱影響による鋭敏化
    ステンレスの場合、点付けでも局所的な炭化クロム析出が発生することがある。

3. 点付けの種類・分類

溶接方法による分類

  • TIG(アルゴン溶接)点付け
    • 高品質・精密部品向け
    • 薄板やステンレスの配管で多用
  • MIG/MAG(半自動溶接)点付け
    • 生産ラインで効率的
    • 厚板や量産品に適応
  • 被覆アーク溶接(棒溶接)点付け
    • 現場・補修に向く
    • 汎用性が高く、設備負荷も少ない

点付けのパターン

  • スポット式点付け
    点の間隔を一定にして部材を仮固定
  • 連続点付け
    長い部材や曲線部で適用。後で本溶接に切り替えやすい

4. 点付けの選び方・使用上の注意点

適切な点付け条件

  • 電流・電圧:母材厚みに応じて調整(薄板:低電流)
  • ビード長さ:母材の厚みの1/3〜1/2程度が目安
  • 点付け間隔:板厚や形状によって5〜15cm程度

使用上の注意点

  1. 母材変形防止
    入熱を抑え、点付けの数と位置を工夫する
  2. 順序を考慮
    複数部材の組み立てでは、対称に点付けして歪みを抑える
  3. 溶接痕処理
    点付け跡は本溶接前に軽く研磨して、仕上げ性を高める

5. 点付けの導入事例・具体例

5-1. 自動車・家電板金

  • 薄板のボディパネルやフレームに点付け
  • TIG点付けで高精度に仮固定

5-2. 建築鉄骨

  • 大型構造物の柱・梁の接合でMIG点付けを活用
  • 部材変形を抑えながら仮固定

5-3. 配管・タンク製作

  • ステンレス配管の曲管接合でTIG点付け
  • 正確な位置保持と歪み防止に寄与

6. 点付けに関するよくある質問(FAQ)

Q1. 点付けだけで強度は出せますか?
→ いいえ。点付けは仮固定用です。本溶接で完全な強度を確保します。

Q2. 点付け間隔はどれくらいが良い?
→ 板厚や母材材質に応じて5〜15cmが目安です。厚板では間隔を短くすることがあります。

Q3. ステンレスは点付けで錆びますか?
→ 表面処理が必要な場合があります。点付け後は酸洗いや不動態化処理を検討してください。


7. まとめ・次のステップ

溶接の点付けは、寸法精度や歪み防止に欠かせない基本工程です。

  • TIG、MIG、被覆アークいずれも適材適所で活用
  • 適切な電流・電圧・間隔を守ることで変形リスクを最小化
  • 本溶接前の仮固定として、加工精度と作業効率を大幅に向上

点付けの技術を習得すると、製造業や板金加工、建築・化学装置分野での溶接精度が格段に向上します。
まずは小型部材で練習し、母材や溶接法ごとの最適条件を確認しましょう。

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