アルゴン溶接とTIG溶接は何が違うのか?混同されがちな名称と本質的な違いを整理する

製造業や金属加工の現場、あるいは発注側の設計担当者にとって、この疑問は非常に多く見られます。
結論から言えば、両者は同一視されがちだが、厳密には意味の整理が必要な言葉です。
本記事では、アルゴン溶接とTIG溶接の違いを原理・呼称・実務上の使い分けという観点から体系的に整理し、現場や設計判断で迷わないための基準を解説します。
アルゴン溶接とは何か|現場で使われてきた通称の正体
アルゴン溶接とは、溶接部をアルゴンガスでシールドしながらアークを発生させる溶接方法を指す、現場由来の呼称です。
日本の製造現場では古くから使われてきた言葉で、特にステンレスやアルミ溶接の文脈で頻繁に登場します。
ただし、アルゴン溶接という名称はJISや国際規格で定義された正式名称ではありません。
実際には、アルゴンガスを使用する溶接方法は複数存在し、その代表例がTIG溶接です。
この点を整理しないまま議論すると、仕様認識のズレや発注ミスにつながることがあります。
なぜ「アルゴン溶接」という言葉が定着したのか
理由は非常に実務的です。
被覆アーク溶接と区別するため、「ガスを使う溶接=アルゴン溶接」として現場で簡略化された呼び方が広まりました。
特に以下のような現場環境で使われてきました。
- ステンレス製タンクや配管の溶接
- 外観品質を重視する板金加工
- 半自動溶接との差別化
TIG溶接とは何か|正式名称と溶接原理
TIG溶接とは、Tungsten Inert Gas Welding の略称で、タングステン電極と母材の間にアークを発生させ、不活性ガスで溶融部を保護する溶接方法です。
JISやISOでも正式に定義されている工法であり、技術的な共通言語として使用されます。
TIG溶接の基本構造と特徴
TIG溶接では、電極自体が溶けないため、アークが非常に安定します。
溶加材は必要に応じて別途供給するため、入熱量と肉盛量を独立して制御できます。
この構造が、TIG溶接の高品質を支えています。
- スパッタがほぼ発生しない
- 溶融池の視認性が高い
- 薄板や精密部品に適する
アルゴン溶接とTIG溶接の違い|本質は「名称」と「管理精度」
ここで改めて整理すると、アルゴン溶接=TIG溶接と説明されることが多いものの、厳密には以下の違いがあります。
| 項目 | アルゴン溶接 | TIG溶接 |
|---|---|---|
| 名称の位置付け | 通称・現場用語 | 正式工法名 |
| 規格定義 | なし | JIS・ISOで定義 |
| 管理・仕様書 | 曖昧になりやすい | 明確に管理可能 |
つまり、技術的な溶接原理は同じでも、使われる文脈が異なるという点が最大の違いです。
発注・設計・品質管理の場面では、TIG溶接という正式名称を用いることが重要になります。
混同が引き起こす実務上のトラブル
アルゴン溶接という曖昧な表現を使うことで、以下のようなトラブルが発生するケースがあります。
- 半自動溶接(MIG)と誤認される
- 溶接条件が統一されない
- 品質要求が伝わらない
特に外注加工では、呼称の曖昧さが品質トラブルに直結します。
用途別に見る正しい選び方と使い分け
TIG溶接を明確に指定すべきケース
- 外観品質が重視される製品
- ステンレス・アルミの薄板
- 医療・食品・半導体関連部品
現場会話としてアルゴン溶接が使われるケース
- 社内限定の口頭指示
- 熟練作業者同士の共有
- 仕様書を伴わない補修作業
ただし、これらの場合でも、文書化する際はTIG溶接に統一することで、認識ズレを防げます。
