アークストライクとは?溶接時に起こりうる原因と防止策を徹底解説

アークストライクとは?溶接時に起こりうる原因と防止策を徹底解説

溶接作業においてアークストライク(arc strike)は、見落とされがちなトラブルのひとつです。母材表面に突然現れる焼け跡やひび割れ。その正体は、溶接トーチの電極が意図せず母材に接触したことで生じる局部的なアーク放電によるものです。見た目以上に深刻な損傷を与えることがあり、特にステンレス鋼や圧力容器のような高信頼性が求められる部材では、致命的な品質欠陥につながることもあります。

目次

アークストライクとは何か?その定義と原理

アークストライクとは、溶接中に溶接電極が意図しない位置で母材に接触し、局部的にアーク放電が発生する現象を指します。アークが生じた部分では急激な高温によって表面が溶融・酸化し、その後急冷されることで金属組織が脆化します。

この現象は、JIS Z 3001「溶接用語」にも定義されており、「非溶接部における意図しないアーク発生による金属損傷」とされています。詳細はJIS Z 3001で確認できます。

アークストライクの発生メカニズムは単純ですが、その結果として生じる微小亀裂・腐食感受性の増大・応力集中は、長期的に重大なトラブルへと発展します。

アークストライクの発生しやすい材料

材料種別 発生しやすさ 理由
オーステナイト系ステンレス鋼 高い 熱伝導が低く、局部加熱で急冷しやすい
炭素鋼 中程度 比較的延性があるが焼け跡が残る
アルミニウム合金 中程度 酸化被膜の損傷により腐食が進行

特にSUS304やSUS316などのステンレスでは、アークストライク部が再加熱されると粒界腐食の起点になりやすく、衛生配管や化学プラントでは致命的な損傷となります。

アークストライクの主な原因

アークストライクの原因は、主に次のような人的ミスまたは電気的管理不備に起因します。

  • 溶接機の電流設定が高すぎる
  • アークスタート位置の誤り
  • 溶接トーチの不安定な取り回し
  • アースクランプの不適切な位置
  • 予備通電試験を母材上で行う
  • 母材表面の油分・水分による絶縁破壊

例えば、TIG溶接では、電極を母材に近づけすぎると接触放電が発生しやすくなります。また、溶接ロボットではティーチングエラーによって意図しない位置にトーチが当たるケースもあります。

アークストライクによる表面変質は見た目では小さくても内部には微小な亀裂が生じており、疲労破壊の起点となる可能性が高いです。応力集中に関しては、「ステンレス溶接部の応力集中と対策に関して解説」で詳しく解説しています。

アークストライクがもたらす影響

アークストライクによって形成される表面損傷は、単なる外観不良にとどまりません。金属学的には以下のような変化が生じます。

  • 表面酸化層の破壊
  • 再結晶粒の粗大化
  • 炭化物の析出(ステンレス鋼の場合)
  • 粒界腐食感受性の増大
  • 応力腐食割れ(SCC)発生リスクの上昇

特にステンレス鋼では、アークストライク部が鋭敏化(sensitization)を起こしやすく、腐食環境下で急速に損傷が進行します。この現象については日本溶接協会でも防止策が紹介されています。

アークストライクの防止策

アークストライクを防ぐためには、作業前・作業中・作業後の3段階で管理を行うことが有効です。

作業前の対策

  • 電極を母材に接触させないよう、スタートタブやリードプレートを設置する
  • アースクランプは溶接線の近くに確実に取り付ける
  • ケーブルやトーチの取り回しを確認する

作業中の対策

  • 不要な空アークや試験通電を母材上で行わない
  • トーチ姿勢と距離を一定に保つ
  • 溶接開始点を明確にマーキングしておく

作業後の確認

  • アークストライク痕の有無を目視およびPT(浸透探傷)で確認
  • 異常があれば軽研磨または再仕上げを実施

防止策の実施後の品質向上効果については、「溶接品質管理の基本手順に関して解説」で詳しく紹介しています。

アークストライクが発生した場合の処理方法

万が一アークストライクが発生した場合、損傷部の処置を適切に行うことが重要です。

  1. 損傷箇所を特定し、目視・PT検査を実施
  2. 損傷深さが0.1mm未満の場合は軽研磨で除去可能
  3. それ以上の深さがある場合は再溶接または部分補修を行う
  4. 補修後は酸洗・パッシベーション処理を施す

特にステンレス鋼では、補修後の酸洗が不十分だと再腐食の原因になります。適切な酸洗処理方法については、「ステンレス酸洗処理の正しい手順に関して解説」で詳しく解説しています。

アークストライク防止に関するJIS・業界基準

JIS Z 3001のほか、以下のような関連規格・指針があります。

  • JIS Z 3140:アーク溶接作業指針
  • JIS Z 3101:溶接部の欠陥分類
  • 日本溶接協会(JWES) WES 8702:溶接欠陥防止のための管理基準

これらの規格では、アークストライクは「許容されない欠陥」と明記されており、特に圧力容器・配管・建築構造物などでは検査不合格の原因となります。

よくある質問(FAQ)

Q1. アークストライクはどのような原因で発生しますか?
アークストライクは、溶接トーチや電極が意図せず母材に接触した際に発生する局部的なアーク放電が原因です。電流設定の不適切さやアースクランプの取り付け位置ミス、試験通電を母材上で行うなどの人的要因も関係します。
Q2. アークストライクが発生した場合、どのように処理すればよいですか?
損傷部位を特定し、浸透探傷(PT)検査で深さを確認します。0.1mm未満なら軽研磨、深い場合は再溶接・補修後に酸洗・パッシベーションを実施します。不十分な酸洗は再腐食の原因となるため注意が必要です。
Q3. アークストライクを防ぐにはどんな対策が有効ですか?
スタートタブの設置、アースクランプの適切な位置取り、ケーブル取り回しの確認などが有効です。作業中は不要な通電試験を避け、溶接開始点を明確にマーキングしましょう。
Q4. アークストライクが品質に与える影響はどの程度ですか?
アークストライクは外観不良だけでなく、粒界腐食や応力腐食割れ(SCC)を引き起こす要因になります。特にステンレス鋼では鋭敏化が進行し、腐食環境下で急速に劣化します。

まとめ:アークストライク防止は品質の第一歩

アークストライクは、わずかな不注意から発生するものの、構造物全体の信頼性に大きな影響を及ぼす欠陥です。正しい溶接手順、設備管理、そして作業者の教育によって、確実に防止することが可能です。

アークストライクを防止し、溶接品質を長期的に維持するためには、日常の点検・訓練・基準遵守が欠かせません。現場の安全と品質向上のため、今日から意識して取り組んでいきましょう。

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